私の父母はそれほど裕福な生まれではありませんでしたし、就職先も一般的な会社でしたから、収入も極端に高いわけではありませんでした。
それにも関わらず私の父母が死亡した際には、ある程度のまとまった財産が存在していたのです。

父母のような経済的な環境であれば、普通はまとまった財産を残すことは困難なはずです。
それを可能にした要因は、日本において起こった土地バブル現象で、これによって父母はまとまった財産を手に入れることになりました。

父母が結婚してからしばらくした際に、ある家を購入したのですが、それが立ち退き要請となったそうです。
立ち退き要請というのは、無理を言って退去してもらうのですから、一般的な取引価格より高くなります。
そこで大きなお金を得たのですが、そこからは売って得たお金を次に投資することを繰り返して、財産を手に入れたわけです。

しかし母に次いで父が死亡すると、その財産を子供が相続することになるのですが、私には兄が存在しています。
兄は若いときから放蕩な生活をしていたので、父が死亡するまで実家とは疎遠な関係でした。

普通であれば兄弟ですから、半分ずつ遺産を相続することになるはずですが、そうした兄との関係性から、父は兄に対して財産を残さないと遺言したのです。
もちろん父がこのような遺言をしたとしても、兄には遺留分を相続する権利があります。

そのため私は兄に対して父の遺言書を見せたうえで、兄に遺留分を相続してもらうことを伝えたのです
ところが兄は遺留分だけでは不服のようで、私が父にそうした極端な遺言書を書かせたはずだと、私のことまで非難し始めました。

そうした兄の批判を受けたわけですが、私としては遺言書が存在していることを知ってはいたものの、内容は死亡後に遺言書を開封するまで知りませんでした。
父は死亡する前に病気を患っていたので、自身の死期が近付いたことを悟ったようで、死亡する直前になって私に遺言書を手渡したのです。
しかも遺言書については、死亡するまで封を開けることなく保存して、死亡後に親族が複数いる前で開封しました。

したがって父の遺言書に関しては、私が内容に手を加えることが、一切出来ない状況だったのです。
加えて兄は父がまもなく死亡すると連絡したにも関わらず、臨終の際に立ち会うことはありませんでした。
そして兄が最終的に現れたのは、父が死亡して葬儀を行う直前でしたから、私にしてみれば非常識極まりないと感じていました。

このような状況であるのに、兄は父の遺言書の内容を批判するだけではなくて、遺留分だけでは不服だと述べたのです。
そこで私は葬儀に参加していた親族に、父の遺産の相続の方法について相談しました。
すると複数いた親族たち全てが、兄には遺留分だけで良いはずだと言ってくれたのです。

それでも兄は食い下がってきて、遺留分だけではおかしいと言い張りますので、私は対処に困って弁護士に相談することにしました。
この弁護士というのは、父が以前からお世話になっている人で、私も以前に何度か顔を合わせたことがあったのです。

するとその弁護士は、やはり法律的には遺留分だけで良いと言ってくれましたが、私の意思次第でそれ以上に兄に分配することも可能だと言ったのです。
確かに兄は放蕩の限りを尽くして、父の臨終にも立ち会っていませんから、遺留分だけでも問題はないと思いました。

しかしこれ以上揉めるのは避けたいという気持ちもあったので、私はある家を兄に相続してもらおうと考えました。
その家は父が所有していたものなのですが、金額に直すと遺留分を1千万円くらい上回ります。
その条件を今度は先程の弁護士の立会いの下で提案したところ、まだ不服そうな態度を示しましたが、結局は条件を受け入れてくれました。

このような経過を辿ったことから、遺産相続をする際に初めから弁護士に立ち会ってもらっておけば良かったと、後になって感じました。